2011年05月26日
第29回 攻撃性を見せるワンコにはどうすればいいのか?(その4)
前回実際の例をあげながら、支配性攻撃や、競合性攻撃等について説明してきました。今回も、いくつか例をあげて犬同士の間で起こる攻撃性と、絶対治らない攻撃性について説明していきたいと思います。
●兄弟間での攻撃性トラブル
このお話は、訓練士の間では有名な話なのですが、まだ生後半年行かない兄弟(シュナウザー)3頭を飼っている方がいて、一番体の小さい未熟児として生まれてきた男の子だけが、他の兄弟から入院しなければならないほどイジメられているそうで、訓練士に相談がきたそうです。
その訓練士の方は一日その方の生活の様子を見させていただき、原因を調べ上げました。その結果特に取り扱いの仕方が悪いわけではなく、環境が悪いわけではなかったそうです。ただ、飼い主様はイジメられている男の子が、未熟児で生まれてきたためか、非常に手をかけ可愛がっていたそうで、またいじめられるからといって、ほかの子と別の扱いをしていたそうです。
実はこの飼い主様の行動が、兄弟間でのイジメにつながっていました。未熟児の男の子は他の兄弟から見ると完全に序列が下の状態にいるにもかかわらず、飼い主様はあたかも一番上の子に接するような接し方をしていたため、他の2頭の兄弟達からの人間で言うところの嫉妬のようなもので、イジメられていたのです。
この飼い主様には未熟児の子を、必ず最後に接していくようにしてもらい、しっかりとワンコ達の中での序列を崩さないように工夫してもらうと、イジメは治まったそうです。このように多頭飼いする場合ワンコ達の間での決め事を飼い主様がしっかりと把握していくことでトラブルは減っていきます。
●他の犬に対しての支配性攻撃
私がまだ訓練所で見習いをやっていた頃、シェパードのメスで、フェスタという名前の警察犬日本一を取った子がいました。この子はとにかく強い子で、自分以外の犬を寄せ付けないようなところがありました。散歩をしていても、とにかく他の犬を攻撃しようと狙っている子でした。
このような子でもトイレをさせる時は、他のシェパード達と一緒に大きな排便場に出しますが、基本的に喧嘩はしません。
なぜなら、排便の処理をする人間が一人つき、その人間が排便場に出ている十頭もの犬達のボスに必ずなっているからです。このように人(飼い主)が犬のボスになっている状態であれば、必要以上に他のワンコ達に攻撃性を見せることは極めて少ないのです。
ちなみに・・・フェスタを排便場に出している時、まだ頼りない見習い成り立ての子に任せると、ケンカが勃発します。
●突発性攻撃について
(その1)の時にも書いていますが、原因のわからない、脳疾患から来る攻撃性です。脳疾患なので攻撃性をなくすことは不可能と言われています。この攻撃性の多い犬種は、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、アメリカンコッカー・スパニエル等に多く見られます。では、具体的にどのようなものかといいますと、ただ普通に歩いている時や、遊んでいる時にいきなり噛み付いてきます。前触れもありません。攻撃している時は、目の焦点も合っていないような感じになり、ちょっと経つと何事もなかったかのようにいつもどおりの感じに戻ります。この場合は、噛まれない様に取り扱っていくしか方法がありません。
いかがだったでしょうか?ここまでで言える事は、突発性攻撃以外は、どんな噛み癖であっても必ず飼い主様がワンコ達の上位に立たなければならないということと、徹底して馴致しておかなければならないということです。それさえ出来れば、人に対して攻撃性を見せるということは極めて少ないでしょう。
株式会社道楽 顧問ドッグトレーナー 長澤 拓真
第28回 攻撃性を見せるワンコにはどうすればいいのか?(その3)
ワンコ達が攻撃性を見せるようになるのは、飼い主様の取り扱いの仕方や接し方に問題が多い場合がほとんどで(どんな問題行動でもそうなのですが)、飼い主様が変わることとでワンコ達が変わってくれる事が非常に多いです。今回は飼い主様を噛むようになってしまったワンコ達の例を挙げながら説明していきたいと思います。
●飼い主様を噛むようになったワンコ達
・ドーベルマンのA(♂)ちゃんの場合
Aちゃんは、小さい時からの馴致が足りず、またドーベルマンという犬種上、どうしても周りの人たちを警戒していたため、他の犬に対しても非常に攻撃的に興奮するところを見せ、それを静止するような事をすると飼い主様にも攻撃してくる子でした。他にも、ハウスに入れようとすると、噛み付いてくる。首輪をつけようとすると噛み付いてくる。といった行動を見せていました。これは、完全に飼い主様に対しての【支配性攻撃】から来るもので、飼い主様が完全にAちゃんの手下になっているような感じでした。
この子の場合、まず人から何かされることに少し慣らすために、私自身で服従作業をして、少し強制的なところを見せたり、嫌がっていても必ずやらせるようにもっていきました。
私が訓練している間、飼い主様には普段の生活で、紐を無理に引っ張ったりし、犬に刺激を与えてやらせるのではなく、時間がかかってもいいから、Aちゃんに気持ちで負けないようにハウスや、首輪をつける事等をやっていただきました。また、気が向いた時だけかまうようにしていただきました。
人から嫌な事をされても少し受け入れるようになり始め、飼い主様の意識も少し変わり始めた頃に、実際に犬に対して攻撃的になった時にその行動を止める練習をし始めました。
Aちゃんに口輪をつけ(飼い主様に噛まれるという恐怖心を持たせないため)、ロングリードで柱にくくりつけ(万が一のためにそれ以上前に来れないようにするため)、別のリードで飼い主様がしっかりとAちゃんをコントロールしていくように準備をし、Aちゃんがいる庭に訓練されている犬を入れてみました。
Aちゃんは一瞬にして興奮し、けたたましく吠え、襲い掛かって来ようとしましたが、その瞬間リードでしっかりとショックを入れ、何度も繰り返し行っていくうちに、飼い主様に対して歯を当てようとするところがなくなっていき、(事故を防ぐために口輪はついていますが)訓練されている犬のすぐ隣で伏せをさせたり、座らせたりするところまで出来ました。
飼い主様に対しての服従心が少しづつ芽生え始めているので、次に道路で犬とすれ違う練習をしました(口輪がない状態で)すると、ほかの犬を気にして多少興奮するところは見えましたが、飼い主様がしっかりと静止する事ができ、また、飼い主様に攻撃するようなところは見せませんでした。あとは、何度も練習していくだけで良くなるでしょう。
Aちゃんの場合はAちゃん自身が体が大きく力が強いためにどうしても飼い主様が振り回されてしまう所と、飼い主様がAちゃんのためにと、過剰に接していたところから支配性の攻撃に変わってきたものと考えられます。このような場合は過剰に接しすぎないようにする事と、飼い主様がしっかり自信を持って取り扱っていくことでワンコ達は飼い主様をリーダーと認め問題行動は治っていくでしょう。
・ウェルシュ・コーギー・ペンブロークのS(♂)ちゃんの場合
飼い主様からご連絡を頂いた時、お母様と息子さんが手に包帯ぐるぐる巻きの状態でした。一歳過ぎぐらいから、突然噛み付くようになったそうで、怖くて触れなくなってしまったとの事でした。
飼い主様の話を聞いていると、小さいころからとにかく可愛がり、甘やかして育てているのが明確でした。環境も完全に家の中放し飼いの状態ですし、咥えてるものに手をかけると、攻撃。寝ているところを邪魔すると、攻撃。といったように支配性攻撃、競合性の攻撃などを見せる子でした。
飼い主様にお願いしてやっていただいたことは、
①飼い主が必要な時意外は完全に無視をする状態を作り、出してあげる時もベタベタせず、指示を出していくように接すること。
②リビングの外にサークルを作ってもらい、普段はそこで過ごさせるようにする。どんなに要求してきても応えないようにする。
③散歩中引っ張らないように訓練する。
この三つだけでした。
一週間もすると態度が少しづつ変わってきたそうで、極端に嫌がる事をしない限りは以前のような行為はほぼ見られなくなってきたそうです。
この子の場合は飼い主様が良かれと思ってSちゃんに行ってきた行為が、知らず知らずのうちにSちゃんを勘違いするほうに追い込んでいったのでしょうね。時には飼い主様からの過剰な愛情がこういう事態を招くこともあるのです。
・治らなかった例・・・ チワワのk(♂)ちゃん
この子の場合、明らかに序列の逆転行為から来る支配性や、競合性の攻撃、恐怖性の攻撃が強かった子で、飼い主様も子犬の頃から神経質で怖がりな所があるのはわかっていたのですが、怖がりだからかばうような扱い方をしてきたようです。また、お父様は比較的ビシッとできる方なのですが、kちゃんへの愛情が深くとても可愛がっていただける方で、おうちにいると常にkちゃんと一緒にいる様な感じでした。お母様はちょっとせっかちな感じでkちゃんが何かすると、高い声で騒いでしまうような感じでした。
ここのご家庭でも二つの例と同じように行っていくことや、怖がっているものを回避するのではなく逆に向かうようにしていきましょう、ということだったのですが、いくらやっても収まってくれず、色々と長く話していくうちに、必要な時意以外はハウスから出さないように!とお教えしたはずが、可愛そうになってきて・・・と、約束を破っていたりと、次から次へと約束と違うところが出てきました。一見一生懸命やっているように見えて、実はワンコの尻にしかれている生活を続けていたのです。ここのご家庭はいくら言ってもどうしても甘やかすところが多く、飼い主様があまり治す気がないものと思い、噛まれないような取り扱いの仕方をお教えすることしか出来ませんでした。飼い主様を返られなかった私の力量不足ですね。
このように飼い主様の態度や徹底した管理をすることによってワンコ達は少しずつ変わってきてくれます。可愛い我が子であればあるほど、人に迷惑をかけないいい子に育ててあげましょう。
株式会社道楽 顧問ドッグトレーナー 長澤 拓真
第27回 攻撃性を見せるワンコにはどうすればいいのか?(その2)
前回色々な攻撃性の種類をお伝えしてきました。
今回からはその対処法をお伝えしていきたいと思っていますが、その前に・・・犬にとって口を使うという事は、人間でいうところの手を使う事と何ら変わりがありません。子犬同士、または成犬同士の遊びを見ているとよくわかるのですが、口を使って甘噛みしながら遊びます(もちろん体も使いますが)。これは人に対しても同じ事です。教えてもらっていない子たちは、人と遊んでいく中でも一生懸命噛み付こうとしていきます。
実はこの時に、人の服や皮膚に歯を当てても大丈夫!という事を学んでいます。このままだと、何かあった拍子に『ガブッ!』っという事に成りかねませんから、子犬から成長していく段階で、しっかりと「人に歯を当ててはいけない」という事を教えておく必要があります。まずは甘噛みをやめさせる方法からお伝えしていきたいと思います。
●甘噛みをさせないようにするには?
1.手や足を使って遊ばない<
これは、よく甘噛みされる飼い主様に見られるのですが、ワンコ達と遊ぶ時に自分の手をおもちゃのようにして遊んでいる事が多いです。ワンコ達からしてみれば、人の手に対して獲物と同じ感覚が付いてきます。大変面白い事なので、【人の手=オモチャ=噛んでOK!】になってしまいます。ワンコ達と遊ぶ時は、必ず何かおもちゃを使って遊んであげるようにしましょう。そしてこの時に、思わず手に噛み付いてきてしまったら、その時点で遊びをやめるようにしてください。面白かった事が急に終わってしまう事は、ワンコ達にとって非常に良い罰となり、自然と人の手に歯を当ててはいけないことを学習していきます。
2.遊んでいるつもりがないのにじゃれてきてしまう
ワンコ達を撫でてあげる時等にも、よくワンコ達は甘噛みをしてきます。特にお腹を向けている時に撫でてあげる時が多いでしょう。ワンコ達からすると動いている手に面白みを感じてきてしまうので、思わず口を使ってしまうといった感じでしょうかね?こんな時は思いっきり騒いでみたり思いっきり大きな声をあげてみて下さい。ワンコ達がびっくりして噛むのを一時的にやめます。それを何度も繰り返していくうちに、噛む→自分がびっくりする(マイナスのイメージ)と学習していきます。ただし、注意しなければいけないのは、高い声で騒がないでください。ワンコ達は、高い声は楽しい事、低い声は怖い事という感覚を持っているので、高い声で行うと逆に飼い主様からのリアクションが得られたと思い、喜んでしまう可能性があります。また、恥ずかしがらずワンコ達がドン引きするぐらいに思いっきりやって下さい。出ないと効果がないでしょう。
3.ワンコの様子をよく見る事
飼い主様が、ワンコの甘噛みの意味をしっかりとわかってあげる事。前述した二つのパターンはワンコ達が遊んでいる時には効果的ですが、ただ嫌がっている状況では逆効果になってきます。飼い主様は手で遊んであげているつもりでも、実はワンコ達は「ヤメロヤメロ」と怒っているのかもしれません。この状況の時に手を引いて無視したらどうなりますか?ワンコ達は噛みつけばやめてくれると学習します。撫でている時なども同じです。(コワイ、ヤメテ)といっているのにさらにビックリさせるような事を行っていけば、とんでもなく嫌な事をされていることになり、恐怖性の攻撃へと転じる可能性がありますから、気をつけて下さいね。
4.リーダーシップをとっていく事
何も甘噛みが絶対にダメといっているわけではありません。実際、わが家の犬達には「甘噛み、駄目、絶対!」と教えた事はありません。今、4か月のシェパードの仔犬ちゃんがいますが、めちゃくちゃ噛んできますしね(笑)。なぜそれで大丈夫かというと、一緒に生活し大きくなるにつれて、飼い主がしっかりとリーダーシップをとっていけば自然とおさまってくる行為だからです。ただし、あまりにも強く噛んできたりした時には、その都度教えています。
飼い主様がリーダーシップをとれていない場合、ワンコ達が逆ギレに転じる場合があります。天罰的に遊びを中断すると「もっとやれ!」と、唸ってきたり、叱っているつもりが、逆にワンコ達にタテを突かれたりしてしまう事があります。要するに、どんな事を教えていくにもワンコ達の良きBOSSでないといけない、ということです。
株式会社道楽 顧問ドッグトレーナー 長澤 拓真
第26回 攻撃性を見せるワンコにはどうすればいいのか?(その1)
訓練士(トレーナー)に多く問い合わせのある一つに「本気で噛んできて、触ることも出来ない」というものが結構あります。
なぜ噛んでくるのでしょうか?怒りっぽい性格だから?ただ喧嘩っ早いだけ?果たしてそうでしょうか。
今回から飼い主様、他人や他のワンコに対して攻撃性を見せる子達について、少しお話させていただきます。第1回目となる今回はちょっと難しい話になると思いますが、ついてきてもらえると嬉しいです。
●攻撃行動のタイプ
攻撃的行動(噛む)の問題に対処していくためには、攻撃行動のタイプををよく知ることによって、ワンコ達の本心を理解できますし、解決に役立ちます。
・競合性攻撃
好きなオモチャ、食べ物、休息場所等を奪い合う。飼い主の注意を独占するために喧嘩する。
・支配性攻撃
飼い主に対して支配的立場に自分を置こうとする。また、守ろうとすることによって起こる攻撃行動。
・雄性間攻撃
オス犬は生まれつき争う性向を持っています。去勢によって変更しうる唯一の攻撃行動
・恐怖性攻撃
恐怖が誘発する攻撃性はオス・メス両方に見られます。学習的要素があります。敵(嫌なもの)に追い込まれた時に起こる攻撃性
・苦痛性攻撃
事故防衛本能から自然発生的に攻撃してきます。痛みを除いてあげれば大丈夫です。
・縄張り抗争性攻撃
自分達のテリトリーを侵す者への対処。縄張り意識を持った動物の大半は、同種の動物のみに攻撃行動に出るのですが、ワンコ達の人に対してのこの行動は、とてもユニークな行動。
・捕食性攻撃
肉食動物が獲物を殺すための攻撃性です。
・母性攻撃
子犬を守るために近づいたものを攻撃します。
・学習された攻撃
訓練によって攻撃を始める事を教えたり、命令でそれをやめさせることも出来ます。
・突発性の攻撃
通常の原因では説明できない異常な攻撃行動。「脳疾患」だと言われています。野生種ではこうした行動は存在しないそうです。
こうして挙げただけでも、たくさんありますよね。
私の経験から、一般のお客様がご自分のワンコに噛まれる原因として多いのは、『支配性の攻撃』、次に『恐怖性攻撃』、『競合性攻撃』がが多いように思います。
ワンコ達は面白いもので、人にとって都合のいい行動は何回も行なって覚えていくのに対して、このような都合の悪い行動は一回で覚える事が多いのです。
つまり、一回本気で噛まれて、飼い主様が『恐怖心』を持ったりして、気持ちで負けてしまうとその一回でワンコ達は覚えていってしまいます。
さらに言うと、現時点で飼い主様に対してそのような行動をとった事がない子でも、内心どのように思っているかわからない飼い主様が多いので、うちの子は大丈夫と思っていても、何かのきっかけが原因で攻撃性を表に出してくる子もいますので、『うちの子は大丈夫!!』と思わずに、『うちの子も、もしかしたら・・・』ということを頭に留めておきましょう。
また、何度も前科を持っている子などは、癖づいてしまっている事が多いので、その行動が出ないようにうまく扱っていくしかない場合も多く存在します。
次回から一つ一つ対処の方法などを説明していきたいと思います。
株式会社道楽 顧問ドッグトレーナー 長澤 拓真
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